先輩からのメッセージ (8月25日掲載文の続き)
彼女は本校在学中の面談で、ドイツのどこの大学に行くかの相談をしていた時、ハイデルベルク大学は?と薦めてみると、その週末には下記のジョイントレクチャーに参加して、学長先生から名刺をいただいてきていました。恐るべき行動力と、夢をかなえるための持続力です。
小杉 泉 2019年京都こすもす科人間科学系統卒業
[大学選択]
もともと10人家族ということもあり、お金と時間を費やして大学に通うのであれば、何か有意義なものでないといけない、という気持ちがありました。
ドイツの大学に進学したい、と思ったきっかけは、ドイツの高校で受けた歴史の授業でした。ただ単語や年号を覚えるのではなく、自分自身が過去に身を置いて考える、というテストで、結果は散々でしたが、ドイツで歴史を学びたい、と思うきっかけになりました。
ハイデルベルク大学に進学を決めたのは、歴史学科で学べるものの質の高さに加え、2018年に京都大学で開催された「京都・ハイデルベルク・ジョイントレクチャー」という講義で複数の教授をはじめ学長の先生と知り合いになることができたからです。
塾には金銭面の問題もあり、最後まで通いませんでしたが、高校の授業をその分、集中して聴くことができたと思います。
奨学金(日本学生支援機構)の結果は2月に通達の予定でしたので、歴史を勉強するため、京都大学文学部も受験し、無事どちらも受かることができました。ところがその直後、日本かドイツかを3日間で決めなければならなくなりました。(大学合格通知の2日後に奨学金の合格通知が届いたため。)入学すれば卒業はほぼ確定の日本の大学に通って、数多くの先輩たちの通ってきた、いわば安心な道を行くのか、卒業できるかわからないし、授業も母国語ではない、でも、留学以来ずっと恋しかったドイツに戻るのか。迷っていた時に当時の担任の先生がドイツ行きの背中を押してくださいました。あの時の「でもドイツ行きたかったんやろ?」という言葉がなければ、今でもまだ日本にいたかもしれません。
[大学生活]
2019年から始まった大学生活は高校生の時よりもしんどかった、という印象です。学び方が全然違うことも理由の一つでしたし、それに加えてラテン語の習得も必須でしたので、勉強に追われる日々でした。高校では成績は良かった方ですが、大学では思うように点が取れず、教授からはプレゼンテーションを批判されたり、一か月費やしたレポートの書き直しを命じられたり、発表しても意見が通じなかったり、なによりも他のドイツ人学生と自分を比べて落ち込むことが多々ありました。
それでも、ドイツ人でも平均4年はかかる学士課程を3年間で卒業できる程に頑張ることができたのは、友人と家族のおかげでした。尊敬できる教授の存在も大きかったです。(写真4,5)
〔写真4〕週末に大学の友人とSchwarzwald(ドイツ南部 "黒い森")でお泊り
〔写真5〕尊敬する教授からのメッセージを邦訳された著作に書いていただきました。(訳:小杉さん、貴方がハイデルベルクの学生であることを喜ばしく思います。)
[最後に]
最近ヘルマンヘッセの『車輪の下』をドイツ語で読み終わりました。高校時代に自分自身と重ねて読んだ経験があります。おすすめです。アガサクリスティーの『茶色の服の男』もおすすめです。
けれども一番おすすめするのは、多少のリスクを伴いつつも、色々なことに挑戦することです。周りの人に何と言われようとも、人生は一度きりです。将来、近所の子どもたちに沢山思い出話をすることを想像してみてくださ。最終的には何とかなります。
「輝かしい人生」を送っているように思われる人は数多くいます。それは折れ線グラフの頂点だけをとった結果「華々しく見える」だけです。人それぞれ、興味を持つ分野・才能等は異なるもの、比較することに意味はありません。より多くの高校生の皆さんが既成の枠にとらわれず、自分の情熱を注げるものを見つけることができるよう願っています。
2日間にわたり掲載したメッセージを送ってくれた数日後、彼女から以下のメッセージが届きました。
「ハイデルベルクの日常を動画にまとめましたので是非一緒にリンクだけでも掲載していただければと思います。」
https://www.youtube.com/watch?v=Esx40YONMWY